活動背景

親からの愛情を受けられず、暴力や危険にさらされた路上の子どもたち

都市化が進むフィリピンでは、25万人以上の路上の子どもが存在すると言われており、国連・子どもの権利委員会は、その数の多さに強い懸念を表明しています。(2018年ユニセフ報告書)

路上に子どもが押し出される背景に共通しているものに、家族の生活の厳しさがあります。この家族の生活の厳しさが精神的ストレスとなり、家族間係を崩壊させ、家族の離散、家庭内暴力や育児放棄へとつながり、子どもたちは生き延びるために路上へと逃げ出します。

 

路上の子どもたちは、廃品回収や物売り、物乞い等によるわずかな稼ぎを得て暮らしており、空腹や病気に苦しみ、事故や犯罪に巻き込まれる危険にさらされています。また、周囲の大人や政府職員からの差別や偏見を経験し、大人への信用を失い、心を閉ざした路上の子どももいます。

1日に1食しか食べられない子どもがいます。空腹をしのぐために薬物やシンナーに手を染める子ども、病院で治療を受けられず命が危機にさらされてしまう子どももいます。寝ている間に灯油をかけられ、火をつけられた子ども、警察に殺されごみ袋に入れて捨てられた子ども、ギャングの抗争に巻き込まれた子ども、性的搾取を受ける子ども等、暴力や危険にあふれた環境で子どもたちは生活しています。

このような状況にもかかわらず、子どもたちを守る社会保障制度や社会サービスは整備されておらず、また、政府や現地の他団体が運営する児童養護施設は常に満員のため、路上の子どもたちは置き去りにされている状況です。

現地の声
路上で暮らす男の子:
僕は、お母さんがどんな人だったのかも思い出すことができません。3人のお兄ちゃんたちと一緒に、幼い頃お母さんに捨てられてしまったからです。
お母さんは、何も言わずに出て行ってしまいました。理由も全く分からないし、その時の気持ちは、何て言えばいいかよく分かりません。ただ、これから誰が僕にご飯をくれるんだろうと思っていました。僕は、生きるために、川でお金を探したり、物乞いやごみを集めながら過ごしていました。缶詰を盗み、売ったこともあります。路上でお金を稼ぐのは本当に大変で、今日はご飯が食べられるかな、明日は何ペソ稼げばいいのかなっていつも考えていました。

活動内容

アイキャンでは、児童養護施設「子どもの家」を運営しており、5~18歳までの身寄りのない子どもや育児放棄された子どもたちに、安全かつ愛情にあふれたホームを提供しています。

衣食住はもちろん、通学や医療支援、レクリエーション活動を通して、子どもが子どもらしく育つことのできる環境を整えています。また、ルールに従って規律ある生活を送るための指導、料理や掃除等の家事の当番制、金銭管理や計画の立て方等の自立訓練の実施を通して、子どもたちが夢や目標に向かって自立できる力を培っています。

 

過去のトラウマや将来への不安がある子どもに対しては、ソーシャルワーカー(社会福祉士)によるカウンセリングを実施し、彼らが心身ともに健康に育つよう、お母さん・お父さんの存在である常駐のハウスペアレント(寮母・寮父)とアイキャン職員による見守りもしています。

また、暴力や危険にさらされた環境で生活する路上の子どもを一刻も早く保護するために、「子どもの家」ではマニラ首都圏の自治体、政府機関が運営する児童養護施設、他団体とネットワークを形成しています。

これにより、適切なサービスや保護を受けられず、危機的な状況に置かれたままの路上の子どもは、政府機関や他団体より、「子どもの家」へと紹介され、保護される仕組みになっています。さらに、アイキャン職員が路上の子どもが多く存在する地域に訪問し、子どもたちが危機的な状況に置かれている場合は、「子どもの家」で保護する見守り活動も実施しています。

▼アイキャン「子どもの家」の施設紹介

活動の成果

安心かつ愛情にあふれた「子どもの家」で、子どもらしく生活できるようになった子どもたちは、表情が穏やかになり子どもらしい笑顔を取り戻し、大人を頼りにして甘えることができるようになりました。

また、子どもたちは学校に通学して友達を作り、鼓笛隊やボーイスカウトのクラブで活躍したり、成績優秀者として表彰されたこともあります。

 

「子どもの家」に入所した当初は、規則も意識せず時間の感覚も無く過ごしていた子どもたちですが、しばらく経つと、施設の規則を守り、健全な生活を送ることができるようになっていきます。

さらに、アイキャン職員等の大人から信頼される経験や、カウンセリングを通して、子どもたちは自分自身に対しての自信を取り戻し、自分の過去の経験や学びを他の路上の子どもに対して共有できるようになりました。

現地の声
アイキャンの「子どもの家」で暮らす男の子:
僕は、「子どもの家」に入所する前は、学校に通うことはできず、路上でタバコ等を売って生活していました。当時は、シンナーやタバコを吸ったり、窃盗等悪いことをたくさんしていました。生きていくために仕事せざるを得なかったけど、学校にはずっと通いたいと思っていました。
学校を卒業して、安定した仕事を得て、自分の家族を養うことが僕の夢だったからです。「子どもの家」に入所して、現在は学校に通うことができて本当に嬉しいです。僕は成績優秀者として表彰されたこともあり、自分に自信を持てるようになりました。
また、悪いこともしなくなり、ちゃんと規則を守って生活することもできるようになりました。僕は、「子どもの家」に入所して、変わることができました。だから、現在、路上で生活している子どもには、こう伝えたいです。お金がないのは大変なことだけど、それを理由にはせずに、周りの大人に助けを求めて、教育をみんなにも受けてほしい。そうすれば、きっと夢は叶うはずだから。

もっと多くの声をみる場合はこちら(2017年3月発行の冊子「路上のこどものこえ」より抜粋)

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