活動背景

統計に表れず、社会から見放された路上の子どもたち

路上の子どもたちの多くは、正式な出生登録がされておらず、政府の統計に表れない「社会から見えない存在」になっています。

出生登録がされていない子どもは、教育や保健・医療、社会福祉といった本来なら享受すべき社会サービスの利用が制限され、学校に通うことができずに、物乞い・靴磨き・廃品回収・ジープニー(乗り合いタクシー)の呼び込み・花売り・売春、時に軽犯罪等により1日50~100ペソ(約100~200円)ほどの収入を得て、社会や大人の支えなしで生きていかなければなりません。

このような辛い日々を忘れるために、薬物やシンナー(「ラグビー」と呼ばれる接着剤)に手を染めることも多く、路上の子どもの半数以上が薬物を経験していると言われています。

 

また、周囲からの偏見や差別を経験しており、人間不信に陥っていたり、自己肯定感が低い子どもも多く存在します。さらに、路上での不規則かつ規律のない生活に慣れてしまうことで継続的な学校への通学が困難となったり、自身より幼い子どもと一緒に授業を受けることへの劣等感にさいなまれて学校を中退したり、現地教育省が提供している代替教育制度*を利用するものの、教育に意義を見出せず通学を止めてしまう等、小学校または高校の卒業資格を得られず、路上での生活からの抜けられない子どもが多く存在します。
*現地では、”Alternative Learning System=ALS”と呼ばれ、日本の定時制学校に類似する制度

現地の声
路上で暮らす男の子:
僕は小学校2年生までは学校に通っていましたが、お母さんが僕たち4人兄弟を置いて家を出てしまってから、お父さんの仕事も不安定になり、収入が途絶えてしまったので、学校を中退しました。路上では、うずらの卵を揚げた食べ物(現地語で「クウェッククウェック」)を売っていました。どんなに頑張っても1日に100ペソ(約200円)ほどしか稼げませんでした。なので、盗みや強盗、マリファナの密売に手を染めたこともあります。僕も他の子どもたちと同様に学校で勉強したかったけど、生きるためには悪いこともするしかありませんでした。僕のお兄ちゃんは自分自身で薬物を使うようになり、僕や他の兄弟に暴力を振るうこともありました。ある日、家に帰った時にお兄ちゃんが家の中にいて、ブツブツ独り言を言っているのが聞こえました。僕は怖くて家に入らなかったのですが、少し時間が経ってから家に戻ると、お兄ちゃんが首を吊って自殺していました。僕は気が動転して、どうすることもできず、ただただ泣いていました。それが一番悲しかった出来事です。

活動内容

路上の子どもたちが多く生活しているマニラ首都圏(主にマニラ市とケソン市)の地区で見守り活動を定期的に行い、家族はいるものの路上で生活している子どもたちに対して、路上教育を実施しています。

路上教育とは、路上の子どもたちや児童養護施設入所前の子どもたちへ、生活する上で必要な知識や技術を教える教育を指し、読み書き・計算・道徳の授業、薬物の危険性や基本的な病気予防の知識を教えています。また、傷病等の緊急対応が必要な子どもたちに対して、当団体の看護師職員が医療行為を施すこともあります。

 

この路上教育の実施主体はアイキャン職員に限定されません。同じ境遇の中で生まれ育った元路上の若者が、路上の子どもに対して、自身が路上生活から抜け出した経験を共有し、薬物を止めて学校に戻る必要性や、希望を持って将来を建設的に考えることを促すピア教育(ピアは「仲間」という意味)も実施しています。

元路上の若者が、路上で生活する子どものロールモデル(模範的存在)となることで、元路上の若者の自己肯定感の向上と、路上の子どもたちを路上から遠ざけることを促進しています。

また、公立学校や代替教育制度への復学・通学を決意した子どもたちに、出生登録取得の手続きのサポートをはじめ、学用品の提供やカウンセリングを通した悩み相談を行っています。

活動の成果

2000年~2021年4月末までで、合計450名の路上の子どもたちが、路上教育を通して生活する上で必要な知識や技術を身につけたとともに、合計315名の路上の子どもが公立学校または代替教育制度を利用して、教育を受けられるようになりました。

薬物やギャンブルに手を染めるのを止めて、路上での仕事を通して稼いだお金を復学のために貯金する子どもが観察されるようになりました。

 

また、合計515名の路上の子どもが、基本的な病気の予防や衛生状態の維持に関する知識を身につけ、食事を食べる前の手洗いの実践や定期的な爪切り等、行動の変化が見られるようになりました。

さらに、当団体が提供するリーダー育成のための研修に合計964名の路上の子ども・若者が参加し、他の路上の子どものロールモデルとして、学校への復学を促すようになりました。ピア教育を実践する路上の子ども・若者の自己肯定感の向上も見られており、自身の経験を人前で話すことができるようになりました。

現地の声
路上教育に参加した女性:
私の家庭は経済的に厳しく、お父さんは日雇い労働者で収入がない時もあり、お母さんは路上でほうきを販売していましたが、収入はあまりありませんでした。そのため、私は学校を休んで路上でタバコ等を販売して、家族の毎日の食費を稼いでいました。しかし、アイキャンによる路上教育に参加して、学ぶことの楽しさや夢を語ることは素晴らしいことだと気づきました。また、夢を叶えるためには、勉強をしないといけないことを学びました。それ以降、私はアイキャンのサポートで、代替教育制度を利用して、週末に授業に参加しました。私のクラスメートの大半は高卒の認定試験に落ちてしまいましたが、私は試験に合格して高卒の資格を得ることができました。その時、すごく嬉しくて、自分に自信を持つことができました。そのおかげで仕事を得ることもできました。今では、私は元路上で生活していた若者として、路上の子どもたちに路上教育を実施することもあります。その際に、自分の経験を踏まえて、教育の重要性を路上の子どもたちに伝えています。どんな子でも夢を持っています。その夢は自分自身が頑張って、周りの人たちの助けを得ることができれば絶対に叶うことを、これからも伝えていきたいです。

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