アイキャンマンスリーレポート2022年8月号

<フィリピン事業>「子どもの栄養改善に向けた新たな挑戦」

私たちは、2019年10月から、マニラで最も貧しいといわれるトンド地区で、地域参加型の給食活動と保護者に対する栄養研修を実施しています。昨年度、活動評価を行ったところ、給食活動が子どもの身長・体重の増加に貢献していることが確認された一方で、活動への参加率が低くても身長・体重の増加が著しい子どもや、その逆の子どもも観察されました。そこで、給食活動以外の、子どもの栄養状態に影響を及ぼす要因を調査したところ、子どもの身長・体重の増加率が大きい家庭は、そうでない家庭と比べて経済的状況、保護者の栄養知識にほぼ違いはないものの、日々の食事内容が大きく異なると判明しました。そのため、日々の食事内容を決定する保護者(特に母親)の意識と行動を変える必要があると考え、2022年4月より、「味の素ファンデーション」の助成を通して、「ゲーミフィケーション*を活用した食行動改善」という3年間の新事業を開始しました。私たちも、毎日の運動や健康的な食事が重要だと認識していても、行動に移し習慣化するのは難しいと思います。この事業では、健康的な食事を取ることを、ゲームのように楽しく仲間とともに継続して習慣化することを目的としています。*ゲームで用いられるデザイン(ランキング、協力、イベント等)を健康などの他分野に応用して、興味や関心を維持させ、行動を活発化させる手法

7月14日、地域住民ボランティアを対象に「子どもの栄養に関する理想の状態と現実の役割演技」という活動を実施しました。活動の目的は、まず現実と理想の状態を子どもになって演じることで、子どもが置かれている状況を自分自身のこととしてより深く理解することです。次に、理想というのは自分が知っている「こうあるべき状態」のことを指し、現実との対比を通して理想と現実の違いを鮮明化し、情報や知識は必ずしも行動に繋がらないということを実感してもらうことです。理想における役割演技では、魚、野菜、果物を食べる家族団らんの様子が演じられる一方で、現実においては、母親は賭け事にお金を使い、父親は外でお酒を飲み、子どもは家で一人でスナック菓子をおかずとしてご飯を食べている様子が演じられました。参加者からは、「子どもの役を演じて、自分の子どもの気持ちを理解できた。行動を改める必要がある」、「理想と現実の演技を見て、私たちは何をすべきか知っているけど、現実は理想のようにはいかない。どうしたらいいのか」という声が聞かれました。

今回の活動を通して参加者は、子どもが置かれている現状をより深く認識し、このままではいけないと認識できたと同時に、その認識だけでは行動の変化は継続しないことも理解しました。この理解が、ゲーミフィケーションの手法で食行動の変化を促進する上で重要になります。今後は、研修に参加した地域ボランティアが、地域の保護者と子どもに対して、楽しい活動(食事内容の改善のための啓発ポスターコンテスト、ゲームを通したバランスの取れた食事を取るメリットの学び)を実施して、日々の食事内容を変えるメリットを啓発していくとともに、SNSを利用して、地域の仲間とともに子どもの栄養改善というゴールを目指す仕組みを作り、バランスの取れた食事の摂取を習慣化します。栄養分野における行動変容に焦点を当てた事業は、アイキャンでは初の試みになりますが、既存の考え方に捉われず、子どもたちの栄養改善に取り組んで参ります!

執筆者プロフィール

ICANフィリピン事務所
福田 浩之
フィリピン大学修士課程、ICANマニラ事務所インターンを経て、2013年4月に入職。社会福祉士。

 

<能力強化事業>オンラインでフィリピンと中継をつなぎました

名古屋青年会議所が主催する3Gプロジェクト(世界へ羽ばたく青少年たちを育成するプログラム)において、愛知県の中高生9名が、フィリピンと中継をつなぐアイキャンのオンラインスタディプログラムに参加しました。「今まで自分が持っていた固定観念が覆された。現地の人びとの生の声を聞いて、色んな角度から物事を考えることの大切さを学んだ」等の感想をいただきました。

 

<ボランティア・寄付活動推進事業>街頭募金活動及びワークショップを実施しました

インターン生1名、ボランティア15名の合計16名で、街頭募金活動を実施しました。日差しが厳しい日でしたが、46名の方々からご寄付をいただきました。参加者からは、「街頭募金はお金を集めるだけが大切ではないと学びました。アイキャンの説明パネルを目で追ってくれる方がたくさんいらっしゃり、活動促進に貢献できたと実感しました」との声が聞かれました。