アイキャンマンスリーレポート2022年9月号

<能力強化事業>「100円でわたしにできること」

昨年度開催して好評をいただいた、オンラインによる2日間のフィリピンスタディプログラムを今夏も全3回にわたって実施しました。1日目はパヤタスごみ処分場地域、2日目は路上の子どもたちが暮らす地域から中継を繋ぎ、地域散策や事業地の人びとから話を聞く時間を設けました。現地訪問であってもオンラインであっても、人びとの置かれた状況に変わりはなく、また事業地の人びとの協力なくして、この学びのツアーは成り立ちません。

今夏最後のプログラムを実施した8月28日。この日、話を聞かせてくれた路上の子どもの1人、マークくん(12歳・仮名)についてお話させてください。マークくんは、マニラ首都圏のマヨン通りで、兄弟一人と母親と一緒に路上で生活をしてきました。家はなく、コンビニの入り口横などで寝て暮らしています。制服や学用品が買えないため、学校に通うこともできていません。路上では差別や暴言、暴力、交通事故など様々な危険に晒されながら物乞いをし、1日50ペソ~150ペソ(約100円~350円)ほどを稼いで暮らしています。辛い日々の中で幸せに感じる瞬間は、「家族と過ごす時間」と話してくれたマークくん。しかし実はこの日、突然の母親の訃報に接したばかりでした。涙を見せることなく、時に笑顔を見せながら最後まで話を聞かせてくれたマークくん。社会からも守られず、大切な母親さえ失ってしまったマークくんですが、それでも、前を向いて強く生きようとする姿が、参加者や私たちスタッフの目に映りました。

ツアー(プログラム)では、いつも事業地の人びとから話を聞きますが、自身の生い立ちや辛い経験を語ることは容易なことではありません。まして、まだ12歳の子どもにとって、それはきっと勇気のいることだと思います。一方で、自分たちの話を聞き、応援してくれる日本の皆さんの温かさに触れる時間は、心が休まる時間でもあり、嬉しく楽しいひと時でもあると思います。私たちがマークくんの立場だったら、何を感じ、何を考えながら話をし、中継後に何を感じるでしょうか。私たちは、子どもたちが背負った壮絶な生い立ちを聞き、「かわいそう」や「聞かせてくれてありがとう」で終わるのではなく、中継が終わったあとも続く子どもたちの路上での日々にまで想いを巡らせながら、ここで話をしてくれた意味や託された想いを考えていかなければいけないのだと思います。

アイキャンが関わる子どもの数は、25万人以上と言われるフィリピンの路上の子どもの数からするとほんの僅かです。でも、できることはそれぞれ違いますが、日本で暮らす私たちと、現地で暮らす子どもたちが想いをともにして一緒に活動し続けることで、路上の子どもたちが抱える課題を、ひとつひとつ解決していけると信じています。子どもたちが劣悪な環境で必死に働いて手にし、自身やその家族の1日の生活を支える100円は、私たちが日々何気なく消費している100円です。この「100円」の重みを感じながら、その使い道を、皆さんと一緒に改めて考えてみたいと思います。

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執筆者プロフィール

ICAN日本事務局
西坂 幸
大学卒業後、民間企業での事業所運営や広報業務を経て2018年9月より現職。

 

<フィリピン事業>カリエメンバーがシフォンケーキ作りを学びました

元路上の青少年が運営する協同組合「カリエ」の新たな商品開発として、日本のシフォンケーキ職人によるオンライン講座が開かれ、カリエメンバー4名が参加しました。参加したジョイさんは「シフォンケーキを作れるようになったら、もっと新しいお客さんが得られると思うので、たくさん練習して完璧なシフォンケーキを作れるようになりたい」と意気込みを語ってくれました。

 

<能力強化事業>教師国内研修を実施しました

JICA(国際協力機構)主催、NIED・国際理解教育センターの協同による教師国内研修の一環として、アイキャンが運営するフィリピンの「子どもの家」と中継をつなぎました。愛知県、岐阜県、静岡県の12名の教員が参加し、国際理解教育への知見を深めました。参加者からは「子どもたちの生活の様子が見られたり、インタビューを通じて将来の夢などが聞けてよかった」などの感想が聞かれました。