活動の背景
近年、日本に定住する外国人住民が増加し、地域社会の一員としての役割が強まるなか、多様かつ深刻な問題が顕在化しています。
例えば、親子・夫婦間のコミュニケーションギャップ、子育て不安・虐待、不就学・不登校・非行、ニューカマーの高齢化などの課題が挙げられます。
その一方で、外国籍住民への支援は依然として対応が遅れています。外国人の相談内容は、福祉のさまざまな分野にまたがることが多いですが、行政や福祉機関の連携が不十分で、一貫した支援体制が整っていません。さらに、外国人支援を担う実践者が不足しており、福祉専門職と外国人支援者の連携も進んでいない状況です。
また、外国にルーツを持つ子どものたちの課題についていえば、以下のような課題があります。
・母国から中高生の年齢で来日し、学校に適応できず不登校や非行につながるケース
・ロールモデルの不在等により、人生の選択肢が狭まっている若者
・適切な日本語・母語支援を受けられない幼児
様々な課題が表面化するなかで、アイキャンは外国人当事者・日本人・地元企業と関係を築き、課題への問題意識を共有し、解決に取り組む意欲を持つ人々とつながることができました。
私たちは、こうした関係者がそれぞれの「できること」を持ち寄り活かせる場が必要だと考えています。そこで、関係者同士がつながり「ともに」活動できる場や仕組みづくりを推進しています。
現在、この問題意識のもと外国籍住民の割合が10%を超え、特にフィリピン人住民の増加が顕著な岐阜県美濃加茂市と可児市を中心に以下の活動を展開しています。
1. 相談支援
・地域のNPO法人と連携し、多言語での生活相談を実施
・行政窓口や病院への同行支援
・相談内容をWebシステムに記録・分析し、行政とデータを共有して政策提言を促進
2. 地域づくり
・世代や属性を超えて住民が交流できる場を提供
・地域活動に関わる人材をつなぎ、増やす
3. 参加支援
・同じ問題意識を持つ人々をつなぎ、彼らの「やりたいこと」を実現するための場や活動を創出
・伴走支援を通じて、外国ルーツの住民が地域で主体的に活動できる環境を整備
活動の成果
2023年10月より実施している本事業では下記の成果が生まれています。
1. 相談支援
・1年間(2023年10月~2024年9月)で延べ628件の相談に対応
・事務局長が美濃加茂市の多文化共生推進プラン策定委員に選ばれ、外国ルーツの住民の課題を政策提言に反映
2. 地域づくり
・フィリピン、ブラジル、ベトナム出身の住民を含む多国籍のコミュニティを組織
・美濃加茂市や地元企業、岐阜県警と協力し「多文化交流防犯イベント」を開催(約5,000人が来場し、多様な住民の交流の場を提供)
3. 参加支援
・フィリピンにルーツを持つ住民と協力し、外国ルーツの若者向けのキャリア支援としてプログラミング教室を立ち上げ
・外国ルーツの子どもたちの教育課題に関するシンポジウムを開催。市長や行政職員、市民に課題を共有し、外国ルーツの子どもへの教育支援の必要性を認識してもらうことができた。
本事業は赤い羽根福祉基金の助成で実施しております。