マンスリーレポート2022年3月号
<フィリピン事業>「ビジネスの厳しさを学んだ協同組合カリエ」
かつて路上で生活していた若者たちで構成される協同組合カリエ(カリエは現地語で「路上」の意味)は、ビジネスを通して安定的な収入を得ることに加えて、その利益を、路上で生活する子どもたちへの教育活動等へ還元することも目的として活動しています。過去には、パン等を提供するカフェを開いていましたが、昨今のコロナ禍により、店舗を構えたカフェ運営が困難となってしまいました。そこで、オンラインを活用したパンやお菓子の販売に向けて、オンライン販売や広報、マーケティング、商品やパッケージ製作などの様々な研修を受けてきました。
2月25日、カリエのメンバーに対して、自身の商品にどのように付加価値を付けて、他の商品と差別化していくかを学んでもらうために、「食品提供×社会貢献」を組み合わせて経営をしている現地のレストランとカフェを訪問しました。最初に訪問したレストランでは、地元の農家から直接取り寄せた旬の野菜を使用することにより、美味しい料理に加えて、地元農家への支援ができるような仕組みになっていました。続いて訪問したカフェでは、コーヒー豆などの材料を経済的に厳しい状況にある先住民地域から購入するとともに、売り上げの一部を先住民の子どもたちへの奨学金に充てていました。カリエのメンバーからは、「カリエのアイデンティティは『路上』にあるので、元路上の若者が路上の子どもたちを支えるために商品販売をしていることをアピールすれば、私たちのビジネスも成功するのではないか」という声が聞かれました。
カリエの差別化とアピールの方法を学ぶことができ、最初は意気揚々となっていたカリエメンバーでしたが、訪問先のレストランの従業員に言われた一言で、カリエのメンバーはビジネスの厳しさも思い知ることになりました。長年経営に携わってきた訪問先の従業員からは、「社会貢献の部分をアピールするだけでは、ビジネスは成功しない。提供する商品やサービスの質が良くなければ、お客さんは定着しないし、日々の収支を把握して、無駄な支出がないか、もっと効率化できないかを考えていかないと黒字化は難しい」と言われました。それを受けて、カリエのメンバーからは、「今回の研修を通して、カリエの商品と他の商品がどう違うか、自信を持って説明できるようになった一方で、まだまだ私たちは学ばないといけないことが多いことを痛感した」という声が聞かれました。
カリエはこれまでの研修を通して、9種類のパンとバナナチップスを製作できるようになっています。また、成果としては、現地の企業との間でパンの定期販売の話し合いが進んでいたり、オンラインを通して個人からのパンの注文も数件ありました。しかし、カリエのメンバーが安定的な収入を得て、路上の子どもたちの教育に貢献できるようになるには、もっと商品の質を高めて、広報・営業の強化を通したマーケットの新規開拓、適切な財務管理の徹底が必要です。カリエが目標を達成できるように、今後とも皆さまの応援をよろしくお願いします。
執筆者プロフィール
ICANフィリピン事務所
Mariditha Mondares
2008年にアイキャンへ入職。パヤタスゴミ処分場における栄養・保健改善事業、路上の子どもたちの保護、災害緊急対応など幅広い事業に従事。看護師免許を持つ。
<ジブチ事業>アニメーターへの宿泊研修を実施しました
ジブチ事業最後の活動として、難民キャンプにある「子どもの広場」活動を支える青少年ボランティア(アニメーター)への宿泊研修を実施しました。ホルホル難民キャンプの15名のアニメーターと2名の難民スタッフが参加し、研修後には「これからは私たちが責任をもって、研修を通して学んだことを実践し、難民キャンプにおける子どもの保護活動を行っていきたい」等の力強い言葉が聞けました。
<能力強化事業>岐阜県の小学生へ向けたオンライン講演会
恵那市立中野方小学校の「社会科」の授業において、「国際協力の分野で活やくする人々」というテーマで講演を行いました。6年生の全12名が受講し、講演後には「中学生・高校生になったらボランティアに参加してみたい」「食べ物を大切にする」「自分のできることをして、フィリピンの子どもたちの笑顔に繋がれば嬉しい」等の感想をいただきました。