事務局長挨拶

事務局長 福田 浩之

私は、2023年に理事及び事務局長に就任しました。それまでの10年間、私はフィリピンに駐在し、そこに暮らす人々とともに活動してきました。その10年間は、憤り、葛藤、喜びなど様々な想いで溢れていました。子どもたちが、学校に行きたくても路上で生活せざるを得ない状況。どれだけ国が発展しても、子どもたちの状況が変わらない社会構造。そのような現実に打ちひしがれることも多々ありました。

しかし、希望を見たのも確かです。路上で生活していた子どもたちが、アイキャンの活動を通して、同じ境遇の仲間や信頼できる大人と出会い、路上生活から抜け出していきました。その若者たちは、自分たちでビジネスをするとともに、路上から抜け出した自身の経験を活かした教育活動を路上の子どもたちに実施しており、彼ら・彼女らの模範的存在になりました。この10年で見たものは、途方もない課題と絶望ではなく、一人ひとりの力に裏付けられた確かな希望でした。

日本にも、様々な事情によって自分らしく生きることを制限されている人々がいます。人々はそのような状況下で、「仕方がない」「私には無理だ」と諦めてしまうこともあります。しかし、アイキャンは「私たちはできる(ICAN)」と声を大にして叫び続けていきます。
一人では実現が難しいことでも、一人ひとりが「できること」を見つけ、協力し合う。その仕組みを整えれば、自信を無くした人も、制限がある人も、どんな人でも活躍することができるはずです。それは、様々な立場の人とともに活動し、課題を解決する経験を通して確信した、アイキャンの信念です。
これまで、ご寄付やボランティア等、様々な形で「できること」を実践してくださった方々のおかげで、活動を続けることができました。社会の変化に応じて柔軟に対応しつつも、私たちは「一人ひとりのできること」を大切にして、これからもあなたと「ともに」社会課題に取り組んでいきます。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

代表挨拶

代表理事 鈴木真帆

代表理事 鈴木 真帆

いつも私たちの活動を応援してくださり、ありがとうございます。
アイキャンは1994年にフィリピンで活動をはじめ、今年で30周年を迎えることができました。こうして長く活動を続けてこられたのは、応援してくださる皆さまのおかげと改めて心より感謝を申し上げます。

私自身は2006年にマニラ事務所でインターンからはじめ、早くも20年が経とうとしています。
当時、アイキャンはマニラ首都圏ケソン市パヤタス地区でクリニックを運営しており、私はそこで医療事業を担当をしてました。

パヤタスには毎日マニラ一帯のゴミが投棄され、巨大なゴミ山ができていました。住民の大半はゴミ山から廃品を拾って換金し、1日数百円程度の生活費で暮らしていました。生活環境も劣悪で、ゴミ山から発生する化学物質によりが呼吸器疾患を患う人が多く、ゴミ山の作業中に鋭利なもので怪我をしたり、それがもとでひどい感染症にかかる人も多くいました。
結核、寄生虫、デング熱、肝炎など、日本ではあまりみられない疾患も蔓延していましたが、パヤタスには医療機関がなく、最寄りの病院までの交通費もないことから、住民の要望に応えて、アイキャンがクリニックを運営することになったのです。

もともと途上国で医療支援がしたいと思い、看護師を目指した私にとって、住民とともに作り上げてきたこのクリニックから多くのことを学び、過酷な環境下で暮らしながらも明るい住民にたくさんの元気をもらいました。数年前にゴミ山は閉鎖され、パヤタスのクリニックも閉まり、
現在、マニラ事務所では首都圏郊外にある児童養護施設の運営を中心に、日本国内での活動も徐々に増やし、危機的な状況にある子どもたちを守る活動を行なっています。

この30年の間には何度も活動継続の危機があり、今もなお財政的に厳しい状況は続いていますが、アイキャンには20年以上も働いている現地スタッフや、一度アイキャンを離れても戻って来るスタッフなど多くの人財に恵まれ、スタッフ一丸となってこの危機を乗り越えようと頑張っています。

私自身も虐待サバイバーであり、親から適切な養育を受けずに育ちました。幸いなことに周囲の大人たちが手を差し伸べてくれ、今の私があります。
でも、世界中には親から育児放棄され、生命の維持を脅かされる子どもが多くいます。私は自分自身の経験から、子どもは親から育児放棄されても、周りの人たちからの支えで必ず立ち直れると信じています。

30年という節目を迎え、アイキャンはこれからも力を合わせて活動を継続してまいりますので、
どうかみなさまからもお力を貸してください。
今後もかわらぬ応援をどうぞよろしくお願いいたします。

創設者メッセージ

1994年当時の子どもたち

1994年当時の子どもたち

アイキャンの始まりは、1人の会社員が、1993年にはじめて訪れたフィリピンで、様々な環境で厳しい状況に置かれた子どもたちに出会ったことがきっかけです。そのあまりにも過酷な状況を少しでも改善するために、何か「自分」でも「できる」ことがあるはず、と翌年1994年4月に任意団体として団体を設立しました。

まったくのゼロからのスタートでしたが、「やれない言い訳」よりも、「どうしたらできるか」に目を向けて進んできました。

1995年にホームページを開設し、インターネットを通じて賛同者を集めるとともに、奨学金提供、給食提供、保健医療、生計向上、災害・紛争時の支援等、できることを増やして、子どもたちの厳しい環境の改善に寄与する事業に取り組んでいます。1998年に名古屋とマニラに事務所を開設し、その後は活動に応じて、フィリピン、ジブチ、日本等で事務所を開設してきました。

2000年に特定非営利活動法人の認証を受け法人化し、2007年からは税制優遇措置が適用される認定NPO法人として認定を受けました。

アイキャンは、活動で関わった様々な人々から常に学んでいます。人々が変わっていく姿から、「子どもたちやその家族は弱くもなく、愚かでもなく、社会的に劣った存在でもない。そう決めつけていたのは、社会であり、わたしたちなのである。彼ら・彼女らにはもともと自分たちの人生を豊かなものにできる、周りの人々を幸せにできる素質が備わっている」ことを理解し、心に刻んでいます。

私たちは、かわいそうだからその人々のために活動しているのではありません。関わった人々が自らの力で自立した生活を築ける力があると信じているからこそ、ともに活動しているのです。

創設者(副代表理事)龍田 成人