活動背景
社会への参加を阻まれ、貧困の連鎖から抜け出せない路上の青少年
急速に経済成長を遂げているフィリピンですが、経済格差は一向に縮まらず、路上で生活する37万人以上の路上の子どもたちは、経済成長の恩恵から取り残されています。
その主な理由として、路上の子どもたちの教育問題が挙げられます。GDP(国内総生産)への貢献度が91.7%を占めるサービス業及び製造業の両業種(2019年国家統計)が、フィリピン経済を牽引していますが、両業種に就職するためには、高卒資格または就業経験が必要であり、小学校も卒業していない都市部の路上の青少年の多くが、社会参加を阻まれています。
さらに、現地教育省が提供している代替教育制度*や職業訓練を受講するためには出生登録が必要ですが、出生登録がされていない路上の子どもも多いのが現状です。そのため、安定した職業に就くための知識や技能を身につける機会からも阻まれ、路上生活から抜け出す可能性を閉ざされた青少年が、新たな路上の子どもを生み出すという「貧困の連鎖」が続いています。
*現地では、”Alternative Learning System=ALS”と呼ばれ、日本の定時制学校に類似する制度
活動内容
路上の青少年が社会に参加できる場を増やすために、アイキャンでは2010年より、パン屋を併設したカフェを開業すべく、路上の青少年に技術訓練(パン作り研修、営業研修、マーケティング研修等)を実施し、フィリピン初の路上の青少年によって運営される「協同組合カリエ」を設立しました。
カリエはタガログ語で「路上」を意味し、Key for Alternative Livelihood Youth Empowerment (路上の青少年が力をつけて、代替的な収入を得るための鍵)の頭文字を取って、KALYE(カリエ)という名前が付けられています。
KALYEは、2015年には路上の青少年の夢をのせたパン屋をオープンし、その後移転を経て、2016年にはフィリピン最高峰のフィリピン国立大学のキャンパス内に「KALYEカフェ」をオープンして、パンやコーヒー、パスタ等を販売し、収入を得ることができるようになりました。KALYEカフェは、路上の青年に安定した収入を得る機会や職業訓練のための場を提供する目的以外にも、元路上の子どもが社会に貢献する姿を一般市民に伝えて、路上の子どもの課題を社会に対して啓発するという目的と、売り上げの一部を路上の子どもに対する活動費に充当して、路上の子どもの課題を解決するという目的も掲げています。そのため、KALYEは路上の子どもたちの現状や自身の経験を載せた「路上新聞」の発行を通した啓発活動や、路上の子どもたちへの路上教育(生活する上で必要な知識や技術を教える)も実施しています。
2020年3月からの新型コロナウイルス感染拡大により、店舗を構えて運営することが困難な状況に陥ってしまいましたが、現在はオンラインを活用したフィリピンのお菓子(バナナチップス、ドライマンゴー、ラスク等)の販売を通した新たな挑戦を開始しました。
活動の成果
フィリピン初の路上の青少年によって運営される「協同組合カリエ」は、フィリピン最高峰のフィリピン国立大学(政府高官となる者が多い大学)のキャンパス内に「カリエカフェ」をオープンし、パンやコーヒー、パスタ等の販売によって、収入を得ることができました。
また、路上新聞の発行や講演を通して、フィリピン大学の学生に対して、路上の子どもの課題を啓発しました。
2020年3月からの新型コロナウイルス感染拡大により、店舗を構えて運営することが困難な状況に陥ってしまいましたが、カリエカフェの活動を通して、路上の青年は安定した収入を得る機会が得られるようになったとともに、社会参加の阻害により、路上の青少年が経験できなかった「人から感謝をされ、誰かから必要とされる」という経験を得る「居場所」を得ることもできました。
実際にカリエでの就業経験をもとに、就職先を得ることができた者や、自己肯定感の高まりにより、人前で話すことができるようになった者もいます。
活動に寄付する
路上の子どもたちへの活動に寄付をすることができます。例えば・・・
お預かりしたご寄付は、職業訓練を含む路上の子どもたちへの活動のうち、最も必要とされている部分へ充てさせていただきます。