マンスリーレポート2025年4月号
今回は「卒業特集」です。日本と違い、義務教育でさえ卒業できない子どもが数多くいるフィリピン。その中で卒業を迎えた、アイキャンとともに活動する若者・子どもたちの言葉や想いをお届けします。
一つの「夢」が叶った日
報告者:「子どもの家」施設長 マリテス
児童養護施設「子どもの家」の子ども4名が、小学校を卒業しました。「子どもの家」で暮らし始める前は十分に学校に通えていなかったため、4名のうち2名は15歳、1名は17歳での卒業です。どの子も、路上で生活していた頃は、生きるために働くことが最優先でした。「制服を着て学校に通う子たちを見ると羨ましくなった」「このままずっと路上で働き続けないといけなくて、勉強するチャンスは僕には一生来ないと思っていた」と話していた子どもたち。それが、制服を着て学校に通えるようになり、遂に卒業まででき「一つの夢が叶った」と喜びをかみしめていました。保護者として卒業式に出席した私たちスタッフも、子どもたちのこれまでの苦労や今の喜びを感じると同時に、「子どもの家」で勉強をサポートし、励ましてきた日々を思い出し、涙が出ました。
一方で、フィリピンには、学用品や新学期の持ち物を買えないという理由で進級を諦めざるを得ない子どもたちが沢山います。そんな子どもたちの通学を一人でも多く後押ししていきたいと、アイキャンは考えています。
「社会を変える一人として」ローレンさんの強い想い
報告者:事務局長 福田浩之
13人きょうだいで、幼い頃から路上で物売りや物乞いをしていたローレンさんは、11歳のときにアイキャンと出会いました。路上教育*1を通して「自分も路上生活から抜け出せる」と希望を持てたことから、14歳の時、カリエ*2の活動への参加を決めました。そして現在に至るまで精力的に活動を続けています。
家庭的・経済的な理由で学業から離れている時期もありましたが、ALS*3という代替教育制度を利用し、ついに先月29日、27歳にして念願だった高校卒業資格を取得しました。
ローレンさんは一児の母でもあり、私から見ても、母業と学業、カリエの活動の同時進行がとても大変そうでした。それでも彼女には強い意志があり「自分自身のためだけでなく、学業を諦めている子どもたち、特に若年出産をした子どもたちに希望や刺激を与えるためにも、私が学び続ける意味がある。私自身が成し遂げることで彼女たちの希望となり、諦めないことの大切さを伝え、夢の実現を後押ししたい」と何度も私に話してくれました。
卒業式を終えたローレンさんの言葉です。「この日を迎えられて本当に幸せです。私は母親であると同時に、よりよい社会をつくる一人であると信じています。これからも、私たちカリエを応援してくださる皆さんとともに、路上の子どもたちに希望を届け続けたいです」
*1:路上の子どもたちに教育の重要性を伝え、将来を建設的に考えることができるよう促していく活動。現在はカリエ(下記*2)が中心となって実施している。
*2:かつて路上生活をしていた若者たちで構成される協同組合。パンや菓子を販売するビジネスをしながら、路上教育や社会への啓発活動も行っている。
*3:通学しなくても、プログラムに沿って学習し、試験に合格すると学校卒業と同等の資格を得ることができるフィリピン教育省管轄の制度。
【編集者:天羽より】
私は以前ある女の子から「お父さんの通勤費を稼ぐために働くことになり、学校に行けなくなった」と聞き、ショックを受けたことをよく思い出します。子どもたちの話から痛感する、卒業が容易ではない現実…。だからこそ、困難を乗り越えて卒業した彼ら・彼女らに、心の底から「卒業おめでとう!」と伝えたいです。