マンスリーレポート2022年11月号

路上で生活していた私たちだからこそできることがある

協同組合カリエは、路上の若者に安定的な収入を得る機会や職業訓練のための場を提供しています。カリエのメンバーは、かつて路上で仕事をしており、そのため差別された経験を持ちます。同年代の者からは「乞食(こじき)」と呼ばれ、大人からは「路上の子どもが夢を持っても無駄だ。ずっと路上で生活するだけだ」と言われてきました。辛い経験を持つカリエですが、アイキャンの技術訓練を通して2015年には念願の「カリエカフェ」をオープンすることができました。

しかし、カリエカフェの運営は困難の連続でした。少しずつ収入を上げられるようになった矢先に、コロナ禍により閉店を余儀なくされてしまいました。カリエは諦めず、オンラインを活用したパンやお菓子の販売を通して経営の立て直しを図ったものの、売り上げはなかなか伸びませんでした。そんな折に、日本のシフォンケーキ専門店との偶然の出会いがあり、カリエの運営を軌道に乗せるためのシフォンケーキ作りの研修が、2022年8月より始まりました。パン作りの腕には自信のあるカリエも、シフォンケーキ作りには悪戦苦闘の毎日です。3回目となる10月の研修では、焼けたシフォンケーキはふわふわとは程遠く、なかなか綺麗に焼くことができません。1番の原因は温度調整すらも出来ない、カリエの古びたオーブンです。そこで、クラウドファンディングを通して、カリエの取り組みを広く知っていただくとともに、オーブンを購入しようという案が飛び出しました。11月2日に開始を迎えたクラウドファンディングですが、ともに挑戦する仲間とともに、カリエの意義や、この挑戦にかける想いをどのように伝えようかと、連日連夜、打ち合わせの日々が続きました。こうしてカリエは逆境にめげず、新たな挑戦にまた一歩踏み出したのです。

カリエのメンバーはクリスマス前までに、オーブンなどの新しい備品を揃えるとともに、シフォンケーキ作りの技術を習得して路上の子どもたちに振る舞い、クリスマスをお祝いすることを直近の目標にしています。「路上の子どもであっても、ビジネスを成功させることができるということを、僕たちは路上の子どもたちに証明したい」と、カリエメンバーは語っていました。私は、カリエは絶対に成功しないといけない存在だと思っています。なぜなら、カリエは路上の青少年が収入や技術を得られる場として機能しているだけでなく、路上の子どもたちに希望を与え、路上の子どもたちやアイキャンの次号養護施設「子どもの家」で暮らす子どもたちの自立に貢献できる存在だからです。路上の子どもたちの多くは、カリエメンバーがかつて経験したように、差別され、誰からも期待されず、周りに模範的存在がいない環境で育ったことで、「どうせ自分なんて」と自分自身を諦めてしまっています。生まれ育った環境が植え付けた「どうせ自分なんて」という意識が、路上の子どもたちの自立を阻む一つの原因です。その「足かせ」を取り除けるのは、同じような背景を持つカリエメンバーであり、自分たちのことを応援してくれる存在だと思います。カリエはアイキャンの技術訓練をこれまで受けてきましたが、現在は路上の子どもたちの課題の解決に取り組むアイキャンの仲間です。そんな仲間であり、路上の子どもたちの希望の光であるカリエの挑戦、そして成功をなんとしても叶えるため、皆さまの応援をどうかよろしくお願いいたします。

クラウドファンディングの詳細はこちらからご覧いただけます。

執筆者プロフィール

ICANフィリピン事務所
福田 浩之
フィリピン大学修士課程、ICANマニラ事務所インターンを経て、2013年4月に入職。社会福祉士。

 

<ボランティア・寄付推進事業>愛知と東京で3つのイベントに出展

愛知で「ワールド・コラボ・フェスタ」と「なごやNPO応援フェスタ」、東京で「グローバルフェスタ」の合計3つのイベントに参加し、フェアトレード商品の販売や、「NGO相談員ブース」の出展を行いました。来場者からは、「国際協力になるなら、フェアトレード商品を購入してみたい」「フェアトレード商品を生産している人の生活や状況について知る機会になった」等の感想が聞かれました。

 

<フィリピン事業>「子どもの家」の子どもたちと交流会を開催

「子どもの家ファミリープログラム」のパートナーと、「子どもの家」の子どもたちとの交流会を2回実施し、子ども17名と、パートナー8名の方が参加しました。参加者からは、「お互いをより理解し、近く感じるいい機会になった」「双方向のコミュニケーションが楽しかった」などの声が聞かれました。子どもたちは少し恥ずかしがっている様子も見られましたが、和やかな雰囲気の交流となりました。