マンスリーレポート2021年12月号
<ジブチ事業>「スタッフが一丸となって実施した都市難民への現金給付」
現在ジブチ共和国には、約35,000人の難民が暮らしており、その約20%がジブチ市で生活する都市難民と言われています。都市難民の多くは、安定的な仕事と収入を求めて、難民キャンプから都市に移動してきた人々ですが、ジブチの失業率は約47%と非常に高く、難民の人々が職に就くことは容易ではありません。こうした都市難民の家庭では、子どもの教育費にお金を回す余裕がなく、学校に通うことができない子どもたちが多く存在します。そして、このような子どもたちは、暴力、ネグレクト、搾取、虐待といったリスクがより高くなります。
アイキャンは、2018年からジブチ全土における難民の「子どもの保護」活動を行っています。そのため、ジブチ国内にある3つの難民キャンプの子どもたちに加え、都市難民の子どもたちも活動の対象となり、これまでも継続して調査してきましたが、その困難さゆえに、なかなか活動ができていませんでした。というのも、彼らは散在して暮らしているうえに、流動性が高く、実態を把握することがとても難しいのです。そんな中、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と世界銀行の調査によって、「学校へ通えていない子どものいる都市難民の世帯」リストを初めて入手することができました。事前の調査で、子どもが学校へ通えていない原因は、各家庭により異なることが分かりました。そこで今回、アイキャンとしては初の試みとなる「現金給付」の活動を実施することに決めました。「現金給付」とは、その名の通り、現金という目に見える形で、学校へ通えていない子どものいる各家庭へ給付するものです。特定のものを配布するのではなく、現金を給付することにより、「制服が買えない」「教科書が買えない」「通学費が捻出できない」など、事前の調査で明らかになったそれぞれの家庭のニーズに合わせて使用してもらうことができます。こうした理由から、近年では国連を中心として、世界的に現金給付の動きが高まってきています。
活動当日、現金を受け取った裨益者からは、「難民というレッテルから仕事に就くことが難しく、現金収入がないので嬉しい」、「子どもが多く、学校へ行かせてあげられないので非常に助かる」などの声が聞かれました。また、ジブチ市内や近隣住民へアイキャンの認知度を高める目的も含め、ジブチ市のアイキャン事務所を会場として使用しました。これにより、普段は難民キャンプへ行くことがなく、直接裨益者に会う機会が少ない総務系スタッフや事務所の警備員も、朝早くから会場設営に参加してもらったり、外部からの警備員の送迎をドライバーに担当してもらったりなど、スタッフ全員が一つの活動に向けて一致団結することができました。裨益者の嬉しそうな笑顔や、「ありがとう」と直接声をかけてもらったことで、スタッフ全員が大きな達成感を得ることができました。活動後、「アイキャンの一員として活動しているという実感がより一層もてた」と嬉しそうに話してくれました。
今後は、現金給付のような目に見える形での活動だけでなく、難民キャンプで行っているような「子どもの広場」活動に加え、家庭訪問、啓発研修、保護者会議などの、成果がすぐには見えづらい活動にも興味を持ってもらい、相乗効果を出しながら、多角的に都市難民への子どもの保護活動を行っていきたいです。
執筆者プロフィール
ジブチ事務所
土肥 怜
大学院で移民・難民関係を中心に学び国連インターン等を経て2021年8月より現職。
<フィリピン事業>カリエメンバーが様々な研修に参加
元路上の青少年が運営する協同組合「カリエ(タガログ語で、“路上”)」が、財務管理・マーケティング・ブランディングの各種研修に加え、パン製作や食品衛生管理について改めて学びました。参加したメンバーからは、「僕たちのパンは他のお店のパンと比べると価格が高いので、企業や施設に定期的に卸販売をできるといいと思う」等の、販路開拓に関する意見も出ました。
<能力強化事業(NGO相談員)>ジブチでの活動について講演しました
名古屋市立北高等学校の1年生(24名)に対し、イエメン内戦の背景とジブチの難民キャンプでの活動について講演を実施しました。講演後には、高校生として、さらには将来なりたい職業の視点から、自分に「できること」を考えるグループワークも行いました。参加した生徒からは、「学生のうちに、もっと他の国や活動の話も聞き、世界で起きていることについて知りたい」等の感想が聞かれました。