マンスリーレポート2023年3月号
多文化共生事業「アイキャンだからこそ、日本社会に還元できること」
<日本とフィリピンをまたぐ課題への対応の必要性>
アイキャンでは、2022年 10月より、JICA中部の委託を受けて、愛知県及び岐阜県の在住フィリピン人の課題を把握するための調査を実施してきました。近年、JICAは日本国内の外国人との共生社会の実現に向けた活動をしていますが、アイキャンでも、同様の活動の必要性を感じています。なぜなら、日本で生活するフィリピン人の課題は、フィリピンの社会構造の問題と根っこの部分が繋がっているためです。具体的には、日本で劣悪な労働環境や家庭内暴力の問題を抱えながらも我慢して生活するフィリピン人は、母国ではより過酷な貧困生活を送っていた、または、母国の家族への送金の義務を負っているなどの背景を持っています。逃げ場がない状況に置かれているため、問題を抱えつつも、母国の家族のために耐えているのです。
<調査を通して見えた課題と、アイキャンの想い>
2月12日に実施した在住フィリピン人を対象にした聞き取り調査では、 夫の暴力に関して、最初に行政機関には相談せず、日本で暮らすフィリピン人の友人に相談したという声が聞かれました。それを聞き、 私たちは、フィリピンでは行政を通した問題解決が稀であるため、行政に頼らなかったのではという仮説を立て、その仮説をもとに質問を続けたところ、家庭内暴力に対する行政支援の存在について知らなかったという事実や、言語の壁があるため、行政では自分の相談事は取り扱ってもらえないという心理的な不安を感じていたという事実が判明しました。 このように、アイキャンは、フィリピンの社会背景を理解した上で、仮説に基づいた質問ができるため、在住フィリピン人が抱える課題の本質に迫ることができます。 他にも、調査を通じて様々な課題を知ることができましたが、その過程で、例えば 日本で就労するフィリピン人の生活環境が改善されて、フィリピンで待つ家族に送金し続けられるようになることや 、小中学校の途中から日本に呼び寄せられたフィリピンの子どもが、日本語学習の支援を受けながら学校に通って自分の夢を叶えられることは 、全て、アイキャンがこれまで取り組んできた、フィリピンの子どもたちの笑顔を守る活動、未来をつくる活動に繋がるのではないかと考えました 。
<なぜ、今、日本で活動するのか ~皆さまと見たい未来>
アイキャンの強みは、約30年間に渡 り 現場で培った 、 フィリピンの人々の生活様式や文化、考え方などに対する深い理解があることです。パートナーの皆さまの 多くは、フィリピンの子どもたちの明るい未来の実現を後押しするために、アイキャンを応援してくださっていると思います。 なぜ今アイキャンが、在住フィリピン人の課題に取り組むのか、疑問に思われた方もいるかもしれません。しかし、前述のように、 日本で暮らすフィリピン人の課題を改善することは、フィリピンの子どもたちの未来にも繋がると、私たちは考えます。そして、その改善のためにアイキャンの強みを活かした活動をすることで、これまでの経験を日本社会にも還元できるのではと思います。今回の調査を踏まえ、アイキャンに何ができるのか考えつつ、 皆さまと見たい未来を形にしていきたいと考えています 。
ICANフィリピン事務局
福田浩之
~プロフィール~
フィリピン大学修士課程、 ICANマニラ事務所インターンを経て、2013年4月に入職。社会福祉士。
食生活改善のためのポスターコンテストを実施
住民組織メンバー8名が「食生活の改善:家族に栄養価の高い食事を」というテーマでポスターコンテストを行い、住民10名、村の保健員3名、村役員2名が参加しました。ある母親は「家庭から食事内容を変えることが子どもたちの栄誉改善につながるので、このポスターを通して少しでも多くの母親に行動に移してもらえると嬉しい」と語りました。
3県の小学生、高校生、大学生に講演
岐阜県の小学校、長野県の高校、静岡県の大学で、出張サービスによる講演を実施しました。フィリピンの路上の子どもの置かれた現状やNGOの活動、国際協力分野におけるキャリア形成等について講演し、様々な質問に答えました。中には、「もっと話を聞きたい」という生徒の要望があり、時間を延長して質疑に答えるケースもありました。