マンスリーレポート2025年9月号

子どもたちの手による壁画が完成!
報告者:「子どもの家」施設長 マリテス

児童養護施設「子どもの家」の子どもたちは、かつての路上生活で周囲から差別や暴言を受け続けてきました。そのため多くの子どもたちの自己肯定感が低く、自分を表現することや自信をもつことに困難を抱えていると感じます。「子どもの家」では、子どもたちが自分の好きなものや想いを自由に表現できるアート活動を大切にしており、彼らの好きな活動の一つになっています。
先月、地域のグループからペンキの寄付を頂き、子どもたちの提案で「子どもの家」の内壁に絵を描くことになりました。作業当日、子どもたちが通う高校の美術教師も手伝いに来てくれ、一緒に下絵を考えました。子どもたちからは「ここに花を描いてもいい?」「ここの色は青にしたい」とどんどんアイデアが出ました。作業中は教師から「ハケは一方向に動かすといいよ」等の助言を受けながら、二日間かけて丁寧に色を塗りました。最後に、アイキャンのモットーで子どもたちも気に入っている言葉「Not for the people, but with the people(人々のためにではなく、人々とともに)」を中央に書くと、手を取り合っている絵のイメージとも合致して、皆が満足する壁画が完成しました。
翌週、子どもたちは、スタディツアーで訪れた方々に「この部分は僕が描いたんだよ」等と見せ、誇らしげにしていました。自分が描いたもの、頑張った成果を人に見てもらい、褒めてもらえるという経験は、また一つ子どもたちの自信につながったと思います。壁に絵を描くという大胆な作業でしたが、やってよかったと思いました。


外国ルーツの子ども・若者が直接語る実体験と未来
報告者:日本事務局 長谷川薫
岐阜県美濃加茂市と可児市には外国籍の住民が多く、特にフィリピンにルーツを持つ人が多く暮らしています。日本に来たばかりで日本語に慣れていない子どもたちは、学校生活に馴染むのに時間がかかることがあります。また親が忙しく、家庭でも孤独感を抱く場合もあります。アイキャンは、仲間とのつながりを求めて夜の駅前に集まる若者たちに寄り添い、彼らが安心して過ごし本音を語れる場として、定期的に「チルカフェ」を開いています。
この活動を通じて、私たちは外国にルーツを持つ子ども・若者たちの実体験を数多く聞き、彼らが抱える困難だけでなく、秘めた可能性にも気づくことができました。彼らの声を地域の人々にも届け、共感し、応援してくれる仲間を増やすため、8月30日に美濃加茂市でシンポジウムを開催しました。
当日は、外国ルーツの小学生や高校生、そして「チルカフェ」に参加する若者が登壇し、学校生活での戸惑いや家族とのすれ違い、困難を乗り越えた経験について、30名以上の市民の前で語りました。また、外国ルーツの生徒が多く通う岐阜県の高校の教諭からは、彼らの母国の文化や慣習、彼ら自身の興味や関心を出発点にして日本語を学んでいく授業方法についての講演もありました。参加者からは「どんな支援や周囲の理解が『共生』に必要なのかが分かった」「市役所で母子保健を担当しており、子どもにとって『最初の支援』を行う部署なので、関係者と協力してできることを考えたい」といった感想が寄せられました。
地域の課題に取り組むには、まず当事者の声に耳を傾け、その声を広く届けることが重要です。国籍に関係なく、すべての子どもたちの成長と未来を守ることができる社会の実現を目指し、今後も活動を続けてまいります。


【編集者:天羽より】
子どもの家の壁画、ぜひスタディツアー等で多くの方に直接見ていただきたいです!

*スタディツアーについて、詳細はこちら