このプロジェクトの特徴は、(1) 地域行政(BCPC:「バランガイ子どもを守る委員会」)を強化することにより、路上の子どもたちを生み出さないようにするアプローチと、(2) 路上の子ども自身が力を付け、組織(協同組合)を作り、自分たちの現状を改善するアプローチ、そして(3) 福祉的なアプローチを組み合わせる世界初の試みにあります。2012年度には、フィリピン初の「路上の子どもたちの協同組合」が設立され、路上の子どもの問題への新しい解決策を提示します。

ICANマニラ事務所(マニラ首都圏ケソン市)
マニラ首都圏マニラ市、ケソン市
 「フィリピンの路上の子どもたち」は急速な勢いで生み出され、現在では25万人以上(政府発表)に及ぶと言われています。路上に子どもが押し出される背景に共通しているものに、家族の生活の厳しさがあります。この家族の生活の厳しさが精神的プレッシャーとなり、家族関係を崩壊させ、家族の離散、(親や義理の親による)児童虐待、ネグレクト、家庭内暴力へとつながり、子どもたちは暴力から逃れ、生き延びるために路上へと飛び出していきます。路上の子どもの90%以上が家庭内暴力の被害者であるとも言われています。子どもたちの路上生活が始まり、少しでも収入を得られるように都市へ、そして都市の幹線沿いへと移動し、生き残るために、他の路上にいる子どもとグループをつくることで、そして一部はギャングの一員となることで、生き延びていきます。
 路上では、大人からの身体的・性的・精神的暴力が子どもたちに直接的に襲いかかります。寝ている間に大人に灯油をかけられ、火をつけられた子ども、警察に殺され、ごみ袋に入れられ捨てられた子ども、ギャングの抗争に巻き込まれた子、売春を強要された子、誘拐された子など、当団体に関わる子どもたちの経験だけでも、その暴力に溢れた子どもたちの環境を説明するのに十分すぎるほどです。これに、頻繁に起きる交通事故や様々な病気、周囲からの偏見、過去の家庭内暴力に起因するトラウマと人間不信、日々の空腹が子どもたちを襲い、路上の子どもたちの生活は、想像を絶するほど苛酷なものと言えます。このような状況にもかかわらず、暴力から子どもたちを守る社会サービスやソーシャルネットは、子どもたちにほとんど与えられていません。そして中でも、出生登録自体されていない子どもや家族と完全に断絶している子どもたちは、統計に表れることすらありません。 子どもたちは、物乞いや、靴磨き、廃品回収、ジープニーの呼び込みの仕事、花売り、売春や危険な労働、時に軽犯罪等により150ペソ(約100円)から100ペソ(約200円)ほどの「稼ぎ」を得ています。その収入で辛い日々を忘れるための薬物やシンナー(「ラグビー」と呼ばれる接着剤)に手を染めるものも多く、路上の子どもの半数以上が薬物を経験していると言われています
2006年~現在
 路上の子どもに対する活動として、一般的なものが、路上での食糧の提供や強制的に施設に連れていくものがあります。しかし、食料の提供といった一過性の活動では、子どもたちが抱える課題を解決することはできず、また、強制的に施設に連れて行っても、子どもたちは必ず路上に戻ってきます。また「保護」という名において、子どもたちの意思をないがしろにし、自由を束縛する行為自体にも問題があると考えています。そこで、アイキャンは以下の3つのアプローチを取り、包括的に子どもたちの抱える課題を子どもたちと「ともに」、解決しています。

1) 地域行政強化アプローチ
 (1) BCPCの組織化及び強化研修
 
※Barangay Councile for the Protection of Children:「バランガイ子どもを守る委員会」)
  フィリピンにおける最少行政単位であるバランガイには、1974年の法律(子どもと若者の福祉法)で、「バランガイ子どもを守る委員会(以下、BCPC)」の設置が定められており、この委員会が、路上の子どもを含む、地域の子どもたちの福祉を最も近い場所で守る「べき」行政機関として機能することが求められています。しかしながら、マニラ首都圏で路上の子どもたちが最も多いマニラ市とケソン市でのBCPCの組織率は、それぞれ4%と62%となっており、路上の子どもたちを生み出さない地域を作るためにも、このBCPCの強化が求められています。そこでアイキャンでは、両市のBCPCの組織化と強化を目的に研修を実施しています。適切なBCPCの活動計画ができると、バランガイの予算の1%が、BCPCに振り分けられ、持続的にBCPCが機能できるようになります。
 (2) BCPCの研修用研修
 
路上の子どもたちのことを一番よく知っているのは、路上の子どもたち自身です。BCPCの大人に研修を行う際に、アイキャンでは、路上の子どもたち自身を講師として招待し、路上の子どもたち自身が、路上の子どもたちの置かれている現状について、BCPCの大人に教えています。子どもたちの声をBCPCに組み込むために、子どもたちに研修を行っています。

2) 路上の子ども(若者)の力によるアプローチ
 路上のこどもたちは、国からも地域からも、家族からも福祉を提供されない中、同じ境遇にある子どもたち同士で力を合わせて生きてきました。この力を子どもたちの福祉を最大化する形で増やしていくのが、このアプローチです。
 (1) 路上の子ども(若者)の協同組合設立・及び強化
 路上の子ども(若者)たちの協同組合を設立し、子どもたちが中心となって、路上の子どもたちが抱えている課題を解決していきます。路上の子ども(若者)たちの協同組合は、フィリピン初の試みです。

 (2) 子ども・若者開発銀行
 貯蓄の習慣がない路上の子ども(若者)たちが、お金を預け、計画的にお金を使うことを学ぶ活動です。

 (3) 教育:路上教育(Street Education)
 
子どもたちと信頼を構築し、自暴自棄になっている子どもたちが、建設的に将来を考えることができるよう促し、自分の夢を達成するために何をすべきかを「ともに」考える活動です。そして、その中で、子どもたちが自ら麻薬やシンナーを止めたり、学校に戻る必要性に気づき、子どもたち自身が、行動していくことを待ちます。路上の子どもたち同士のピアカウンセリングも重要な活動の一つです。
 (4) 生計向上:社会起業活動
 路上の子どもや若者たちが、収入を得て、生計を立てて行けるように、様々な社会起業の活動を行っています。現在、力をいれてるのは、パン屋さんになるためのトレーニングです。他にはTシャツのプリント等のトレーニングがあります。
 (5) 保健:ジュニアヘルスワーカー育成活動
 路上の子どもたちや若者たちは、様々な暴力によりケガをしたり、病気になることが多くあります。この活動では、路上の子どもたちの中でリーダー的存在の子どもたちに対して、ジュニアヘルスワーカー(路上の子どもの保健師)になるためのトレーニングを行っています。
 (6) アドボカシー:路上新聞の発行、路上演劇作成
 路上の子どもたち自身の路上での経験を語る路上新聞を発行したり、演劇を作成・発表することで、路上の子どもたちの正しい理解を促しています。

3) 福祉的アプローチ

 行政や子どもたちの力だけでは、今すぐ解決が困難な課題に対して、今、目の前にいる子どもたちの命と権利を守る活動です。
 (1) 栄養改善活動
 食べることも困難な状況に置かれている子どもたちに対して、ご飯を提供しています。
 (2) 保健:保健教育活動
 路上の子どもたちのケガや病気に対し、看護師や保健師による保健教育や医療活動を行っています。
 (3) 緊急診療活動
 看護師では対応することができない命に係わるケガや病気に対して、病院での医師による診療や手術、入院の費用を提供しています。
 (4) カウンセリング
 路上の子どもや家族に対して、ソーシャルワーカーによるカウンセリングを行っています。
 (5) 短期・中期保護施設の紹介
 路上から出て、安心して生活し、学校に戻ることを希望する子どもたちに対して、保護施設の紹介を行うとともに、保護施設にて、他の子どもたちと仲良くやっていけるように補助を行っています。
 (6) 出生登録活動
 存在している証明である出生届が出ていない子どもたちに対して、登録を促進する活動を行っています。
 (7) 教育経費補助
 
子どもたちの中には、自分の通学経費をねん出するために、路上で働いている子どもたちも少なくありません。経済的な理由で、通学が困難な路上の子どもたちに対して、通学経費を提供しています。
 (8) 代替教育システム(ALS:Alternative Learning System)
 学校に戻ることが困難な子どもたちに対して、基礎的な読み書きや計算を学ぶ機会を提供しています。アイキャンは、フィリピン政府よりALSの資格を得ているため、アイキャンで学んだことも達は、一定の学力になれば、小中学校の卒業資格をもらえます。また、ALSにおいて、学ぶことに慣れた後で、正規の学校に復学する子どもたちもいます。
 (9) 家族への生計向上や権利トレーニング

 路上で働く子どもたちの親に対して、収入を向上させたり、子どもの権利に関するトレーニングを行っています。

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